2026/11/03 21:51

エルメスのシルバージュエリーには「変形チェーン」と呼ばれる複合的なリンクブレスレットいつの時代も特別な憧憬の対象です。


近年、過去の名作モチーフを再構築して登場した《アレアⅡ(Alea II)》

そして、2010年代にピエール・アルディが生み出し、いまや静かな伝説となりつつある《パラード(Parade)》

アシンメトリーにコマが連なるこの2つのブレスレットは、似ているようでいて、その根底にある美意識や向いている方向はまったく異なります。




「偶然」や「サイコロの目」を意味するアレア。

その本質は、エルメスが辿ってきた歴史のアーカイヴそのものです。

シェーヌダンクル、ブックルセリエ、サランボ……それぞれが主役級の物語を持つコマがランダムに組み合わされ、ひとつの腕元で響き合う。無骨で力強く、まるで贅沢なベスト盤を聴いているかのような高揚感を与えてくれます。近年復刻されたアレアⅡの熱狂も、その変わらないエネルギーに多くの人が魅せられているからに他なりません。


対して、パラードが描いた世界はもっと静かで、彫刻的です。

「パレード(行進)」の名を冠したこの作品のベースにあるのは、シェーヌダンクルが持つ端正なオーバル。

ピエール・アルディはそこにまったく別のモチーフをごった煮にするのではなく、「光とテクスチャーの違い」を持ち込みました。


澄んだ光を跳ね返すプレーンな鏡面。

螺旋の陰影を深く刻み込むトルサード(ねじり)。

光の粒子を細かく散らすキャビアのようなドット。


異なる質感を持ったコマたちが、歩調を合わせて手首の上を行進していく。

モチーフの主張ではなく、光と影のグラデーションで魅せる構築美。それこそがパラードの真骨頂です。


そして今回、私たちが惹かれてやまないのが「TGM(Très Grand Modèle)」という圧倒的なサイズ。


1コマ約3cm、100数十グラムを超える確かな重み。

ともすれば無骨になりがちなこの大ぶりなチェーンが、オーバルの滑らかさとテクスチャーのリズムによって、息を呑むほど上品な気品を纏っています。手首をわずかに傾けるたび、異なるコマがそれぞれの表情で光を拾い、昨日までの手元とは決定的に違う陰影を描き出すのです。

現行の最高峰として存在するアレアⅡに対し、パラードはすでに生産を終えた過去の到達点。


特にコンディションの良いTGMサイズともなれば、世界中を探しても年に数回巡り合えるかどうかという領域に達しています。

それはフランスのアルチザンが手作業で磨き上げ、長い歳月を超えて、あなたの元へ辿り着くための特別な1本。


当店では2022年以降入荷のないアイテムですが、海外からの問い合わせもあり、非常に人気のあるシリーズです。


久しぶりに手に取ってみたいなと思う今日この頃。もし見つけた方がいましたら、Dieu d'or へご一報を!

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